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ナビタイムジャパンでは、国内旅行者向けの総合ナビゲーションアプリ「NAVITIME」をはじめ、訪日外国人旅行者向けに多言語対応の「Japan Travel by NAVITIME」など、ユーザーの移動や観光をサポートするサービスを展開しています。移動手段や目的地に応じた最適なルート検索や、旅前の意思決定や旅中のスムーズな行動を支える機能を通じて、快適で安心な旅行体験の提供を目指しています。こうしたサービスの価値をより多くのユーザーに的確に届けるためには、効果的なマーケティング施策が不可欠です。 しかし、従来使用していたマーケティングツールでは、パーソナライズされた施策実行まで多くの工程が必要でした。そのため、同じメッセージを一斉配信せざるを得ない状況でした。グローバルにユーザーが点在するアプリでも同様に一斉配信を行っていたため、マーケティング効果が損なわれているのでは、と危惧していました。
キャンバス機能を活用してシナリオを構築し、オンボーディング施策、アップセル施策、クロスセル施策などを展開しました。「NAVITIME」アプリでは、自社AIによる分析データとBrazeを活用し、ユーザー行動の期待値別にセグメントしました。そして、各セグメントに有効なメッセージ配信するアップセル施策を実行しました。また、「Japan Travel by NAVITIME」アプリでは、オンボーディング施策として、旅行前と旅行中のユーザーそれぞれに対し、アプリ利用を促す情報を発信したり、ジオフェンスを活用して効果的なタイミングでeSIMを含む関連商品を訴求しました。
「NAVITIME」アプリのアップセル施策では、自社AIとBrazeによって「アップセル候補」に分類されたユーザーの年額プラン転換率が、従来比3.36倍に向上しました。「Japan Travel by NAVITIME」アプリでは、オンボーディング施策によりアプリのリテンション率が日次平均で10%向上し、ジオフェンスを用いた施策等により、Braze経由でのeSIM販売金額が向上し、総取扱量の3割を占めるまで成長しました。
年額プランへの転換率
アプリのリテンション率
自動配信を実現したプッシュ通知数
当社は、「NAVITIME」をはじめとする個人ユーザー向けのナビゲーションサービスや、同サービスの技術を活用した法人向けのビジネスソリューションを提供しています。
「NAVITIME」は、徒歩、電車、車、バス、飛行機など、さまざまな移動手段を組み合わせて、最適なルートをドアtoドアで検索できるサービスです。その特徴は、検索条件のきめ細かさにあります。検索エンジンを自社開発することで、例えば日陰を優先した「日陰ルート」や、公共交通機関を用いて複数の目的地を効率的に回る「巡回経路検索」など、ユーザーの細かなニーズに対応した検索機能を提供しています。
また、訪日外国人観光客向けには「Japan Travel by NAVITIME」を提供しています。同サービスでは、経路検索のほかに、旅行のプランニング機能やアクティビティ予約機能なども提供しており、特に外国人観光客専用フリーパス「JAPAN RAIL PASS」に対応したルート検索機能が好評です。
トラベル事業部 兼 メディア事業部 事業部長 毛塚 大輔氏
以前利用していたマーケティングツールでは、パーソナライズ施策の設定工程が煩雑で、同じメッセージを一斉配信せざるを得ない状況でした。「Japan Travel by NAVITIME」のようにグローバルにユーザーが点在するアプリでも、配信時間が同一であったため、マーケティング効果が損なわれているのでは、と感じていました。
そこで、新たなマーケティングツールの導入検討を開始しました。複数の候補ツールのデモを試した結果、直感的に一番使いやすかったのがBrazeでした。特にキャンバス機能については、「これほど簡単に施策のシナリオ設計ができるのか」と驚いた担当者もいました。Brazeはスマートフォン向けのUIに注力している点も魅力でした。「スマートフォン向けのパーソナライズ施策を実行し、アプリ内の売上を向上させること」を目指して、2024年6月よりBrazeの本格利用を開始しました。現在は、「NAVITIME」アプリと「Japan Travel by NAVITIME」アプリを含む3つのアプリで施策を展開しています。
トラベル事業部 兼 メディア事業部 インバウンドビジネス担当 マネージャー 小野塚 隼人氏
新規ユーザーの定着を目的としたオンボーディング施策、上位プランへのアップセル施策、休眠ユーザーの掘り起こしなどを展開しています。オンボーディング施策では、アプリの使い方や各種設定方法などアプリ内メッセージやプッシュ通知で配信しています。
また、アップセル施策および休眠ユーザーの掘り起こしでは、自社AIとBrazeを連携させて施策を構築しました。具体的には、自社AIの分析データを基に、Brazeを活用して有料会員ユーザーを「アップセル候補」「ダウンセル候補」「判定外」に分類し、各セグメントに対してプラン切り替えの案内や便利な機能の紹介など、有効なメッセージを配信しています。
キャンバス機能を活用し、セグメント別に有効なパーソナライズ施策を構築できています。セグメントの例としては、「タクシー乗り場の混雑状況を1回以上確認しているユーザー」や「新橋駅発着で検索したユーザー」など、細かく設定されており、その数は計106種類に上ります。このような細かなセグメント分類により、ユーザーの状況に応じたメッセージを届けた結果、オンボーディング施策では新規無料ユーザーの7日後リテンション率が12.5%改善しました。
また、アップセル施策では、「アップセル候補」と判定されたユーザーの年額プランへの転換率が従来比3.36倍に向上しました。さらに、休眠ユーザーの掘り起こし施策においても、休眠ユーザー復帰率が10%改善しています。
主に、オンボーディングによるアプリ利用促進施策と、関連商品のクロスセル施策を実施しています。
オンボーディング施策では、旅行前と旅行中のユーザーそれぞれに向けて、7日間にわたり5言語でさまざまな情報をプッシュ通知しています。具体的には、旅行前ユーザーには旅行プランニング機能を含め旅行準備に役立つ機能を紹介し、旅行中ユーザーには周辺の観光情報などアプリの活用を促すコンテンツを配信しています。
クロスセル施策では、ジオフェンスを活用して各種商品の販売促進を展開しています。Brazeのジオフェンス機能を活用することで、地図上で設定した場所にユーザーが訪れたタイミングで、任意の情報を配信できます。この施策では、国内外の空港やホテル、コンビニ、ディスカウントショップなどを配信スポットとして設定し、ユーザーがその場所を訪れたタイミングで新幹線のチケットやeSIM、割引クーポンなどの情報をプッシュ通知しています。
以前は、アプリダウンロード後のリテンション維持が課題となっていました。しかし、アプリ利用促進施策を実施した結果、施策開始日から7日目までの間でリテンション率が日次平均10%向上しました。これは、キャンバス機能で旅行前と旅行中でシナリオを分け、通知の内容やタイミングを適切に調整できたことが、リテンション率改善の大きな要因だと考えられます。
また、関連商品のクロスセル施策では、ジオフェンスを活用し、国内外の空港や国内ホテルにユーザーが訪れたタイミングに絞ってeSIMを訴求した結果、eSIMの販売数を大きく伸ばすことができました。アプリ内eSIMの売上比率のうち、約30%はBrazeの訴求に関連するものと推測しています。その他、Brazeのジオフェンスの精度の高さや、配信スポットを一括設定できる点も魅力に感じました。
なお、これらの施策を通じて、「Japan Travel by NAVITIME」アプリでは、毎日1万4,000件ものパーソナライズされたプッシュ通知を自動配信できています。
引き続きBrazeを活用し、当社アプリの売上を伸ばしていく方針です。具体的には、利用者向けのアンケートを実施し、よりセグメントを充実させ、割引訴求効果が高いセグメントにクーポンを配信したり、位置情報を活用してイベント会場周辺にいるユーザーにピンポイントで広告配信を行うなど広告ビジネスの商材開発にも役立てることを検討しています。
また、現在Brazeを導入しているアプリ以外にも順次、導入を広げていく予定です。ユーザーとのコミュニケーション強化、ひいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化を図るため、引き続きBrazeを最大限に活用していきたいと考えています。
Brazeさんに相談をすると、当日または翌営業日には回答がいただけるため、迅速にPDCAサイクルを回せています。機能面だけでなく、サポート体制も充実しているBrazeさんは当社にとって、ユーザー起点の事業展開を進めていく上での重要なパートナーです。
「NAVITIME」アプリではオンボーディング施策やアップセル施策等を実施。アップセル施策では自社AIの分析データとBrazeを用いてセグメント分けした「アップセル候補」の年額プランへの転換率が3.36倍に向上しました。また「Japan Travel by NAVITIME」アプリではアプリの利用促進施策等を展開。キャンバス機能で旅行前ユーザー・旅行中ユーザーそれぞれに有効な情報配信を行うシナリオを構築し、リテンション率が日次で平均10%向上しました。