Braze City x City Tokyo 2025 開催レポート:Braze プロダクト&パートナー戦略
公開 2025年12月03日/更新 2025年12月03日/11 分で確認


Team Braze
Braze製品のイノベーション:次の進化へ
Braze Inc.のCTO兼共同創業者であるジョン・ハイマンが、2025年11月13日(木)に開催された「Braze City x City Tokyo」に登壇し、AIを活用した次世代の顧客エンゲージメント戦略とBrazeAIの新製品群を発表しました。今回発表された新製品群(BrazeAI Decisioning Studio、BrazeAI Operator、BrazeAI Agent Console)は、インテリジェントなエージェントを活用し、すべての顧客体験を自動的にパーソナライズできます。

製品発表①:BrazeAI Decisioning Studio(一般提供開始)
概要と背景
BrazeAI Decisioning Studio は、顧客エンゲージメントにおける意思決定を自動化・最適化するAIシステムです。「誰に」「何を」「いつ」「どのチャネルで」送るかをAIが判断して、パーソナライズしたコミュニケーションを支援します。従来のマーケティングでは「解約リスクが高い顧客にはこのメッセージ」「ビジネスシューズ購入者にはこのオファー」といった静的なルールとセグメントで施策展開をしていました。しかし、この方法では顧客一人ひとりの細かな状況や行動の変化に対応しきれません。マーケターの手動作業の負担 これまでマーケターは、以下の作業を繰り返し行う必要がありました。
- チャーン予測モデルでリスク顧客を特定
- 商品推奨モデルで各顧客の購入意向を予測
- マイクロセグメントごとにA/Bテストを実施
- 結果を分析して、次の施策を計画
BrazeAI Decisioning Studioは、強化学習ベースのAI意思決定エージェントで、これら課題を解決します。顧客の数百にも及ぶ特性をリアルタイムで分析し、一人ひとりに最適なメッセージ内容、配信チャネル、送信タイミング、オファー内容を自動的に決定します。
BrazeAI Decisioning Studioの導入により、マーケターは目標とガードレールを設定するだけで、以下を自動実行することができます。
- 顧客ごとの最適な施策の判断
- リアルタイムでの学習と適応
- 継続的な実験と改善
導入事例:Yum! Brands(タコベル、ピザハット、KFC)
Yum! Brandsは、世界で最も愛されているクイックサービスレストランを運営するグローバル企業です。傘下ブランドには、タコベル、ピザハット、KFCがあります。
タコベルは、BrazeAI Decisioning Studioを使って、アクティブ顧客からのトランザクションを最大化する施策を展開しています。
AIが最適化している要素
- メールの件名とヘッダー
- 配信時間帯
- 配信チャネル
- オファーの種類
BrazeAI Decisioning Studioは、顧客一人ひとりについて150以上の特性から学習し、個々の顧客に最適なメッセージ、頻度、配信タイミング、送信間隔の組み合わせを見つけ出します。
Yum! Brandsは、1年未満という短い期間でタコベル、ピザハット、KFCの3ブランド全体に8つのAI意思決定エージェントを展開、すべてのエージェントで測定可能な成果をあげています。
またタコベルでは、従来の戦略と比較して、顧客あたりのトランザクション数が2.6倍に向上しています。
製品発表②:Braze MCP Server(ベータ版)
MCPは、外部ツールやデータソースにLLMがアクセスして利用できるようにする、オープンソースかつ業界標準となりつつあるプロトコルです。Brazeはこの仕組みに基づき、Braze MCP Serverを開発し、Brazeユーザー向けにベータ版の提供を開始しました。簡単なステップで、まるで同僚と会話するようにBrazeデータとチャットできるようになり、キャンペーンパフォーマンスの確認、セグメント分析、戦略的推奨事項の取得ができます。Braze社内では、高パフォーマンスと低パフォーマンスのメール件名を比較分析し、より効果的な件名作成に活用しています。
製品発表③:ChatGPT カスタムアプリ統合(業界初)
ChatGPT カスタムアプリは、OpenAIが提供する新しい仕組みで、企業が自社のサービスをChatGPTの中に組み込めるようにするものです。ブランドがこの時流を捉えられるように、マーケターがこの重要な新しいタッチポイントを活用、チャットインターフェース内とその先で顧客をより深く理解し、エンゲージメントできるように、ChatGPTとの業界初の統合を発表しました。
主な機能:
- ChatGPT内の会話からファーストパーティデータを収集し、ユーザープロファイルを充実
- ChatGPT会話内で直接パーソナライズされたメッセージをトリガー
- ChatGPTでのアクティビティをメール、プッシュ、SMSなどのチャネルと連携
製品発表④:BrazeAI Operator(ベータ版)
BrazeAI Operatorは、Brazeダッシュボードに組み込まれたAI搭載アシスタントです。単一のエージェントインターフェースで、ワークフロー内で回答、トラブルシューティングのガイダンス、ベストプラクティスを提供します。活用例:
- 「開封率を業界ベンチマークと比較したい」
- 「カート放棄キャンペーンのコンバージョン率が下がった理由を知りたい」
このような質問に対して、AIが深掘り分析を提案し、マーケター単独でより多くのタスクを遂行できるようサポートします。2026年Q1に一般提供開始予定です。
製品発表⑤:BrazeAI Agent Console(ベータ版)
顧客エンゲージメントライフサイクル全体で、様々なタスクを実行できるAIエージェントを作成・管理・展開するための新しいダッシュボード機能です。Brazeを活用したあらゆるタッチポイントで実行、学習、最適化を行い、数時間を数秒に、メッセージを1:1のインタラクションに変換します。
活用例1:Eコマースブランドのアンケート対応
- アンケート回答を分析し、不満を持つ顧客や高価値顧客をリアルタイムで特定します。
- 適切な対応フローに自動振り分けします。
- ブランドガイドラインに沿ったトーンとスタイルで、カスタマイズ・ローカライズされたメッセージを送信します。
製品発表⑥:Message Prioritization(ベータ版)
複数のキャンペーンや事業部門が同じ顧客をターゲットにする際の優先順位付けを自動化する、業界初のソリューションです。今後、BrazeAI Decisioning Studioと優先順位ルールセットを組み合わせる機能強化も予定されています。
実例:
- 週1通のメール制限がある場合、月曜日に低優先度キャンペーンの対象になっても、その週の後半に高優先度メールが予測されれば、Brazeは月曜日の送信をスキップします。
- 1日2通のプッシュ通知制限がある場合、その日に対象となる全通知の中から最も優先度の高い2通のみを送信します。
LINEチャネルの機能強化(2025年11月リリース)
LINEは日本市場において最も重要な顧客エンゲージメントチャネルの一つです。今回の機能強化により、マーケターはLINEチャネルをより戦略的に活用できるようになります。
2025年11月に追加された新機能(一般提供開始済み)
1. クリックトラッキング機能 LINE内で送信したメッセージのリンククリックを追跡できるようになりました。
マーケターにとってのメリット
- どのメッセージが実際に顧客の行動を促しているかが明確になります。
- クリエイティブやコピーのA/Bテストが可能になり、継続的な改善ができます。
- クリック率の低いメッセージを特定し、改善策を講じられます。
- ROI(投資対効果)の正確な測定ができます。
2. Currents でのLINE関連イベントのサポート LINEでの顧客行動データを、BrazeのCurrents機能を通じて外部の分析ツールにリアルタイムでエクスポートできるようになります。
Currentsは、BrazeからGoogle Analytics、Tableau、Snowflake、BigQueryなどの既存の分析ツールやデータウェアハウスにデータを自動送信する機能です。このサポートによりLINE単体ではなく、他のマーケティングチャネル(メール、プッシュ、SMS)と統合してデータ分析ができます。
次世代の顧客エンゲージメントへ
ジョンは、次世代の顧客エンゲージメントでは、データの統合・活用・配信、大規模な実験、信頼性の高いプラットフォーム、あらゆるチャネルでの顧客リーチといった従来の要素が引き続き重要であると強調しました。
新しい時代の違いは、マーケターが全ての顧客接点を自ら定義する必要がなくなることです。マーケターの目標、戦略的アプローチ、創造性が、ブランドにとって何が可能かを定義します。
BrazeAI Decisioning Studio、BrazeAI Agent Console、BrazeAI Operatorは、データ、オーケストレーション、マルチチャネル配信への投資に対する「フォースマルチプライヤー」として機能します。これらは全て、AIによる顧客体験変革への第一歩であり、Brazeは今後マーケターが構築するイノベーションに大きな期待を寄せています。

Braze プロダクト&パートナー戦略・パネルディスカッション
Brazeは日本市場への投資を積極的に継続しており、パートナーエコシステムの構築に注力しています。昨年実現したLINEヤフー株式会社とのLINE連携に続き、株式会社ヤプリとの新たな連携について、株式会社ヤプリ 執行役員 カスタマーサクセス本部 本部長の市川 昌志 氏をゲストにお迎えし、両社のパートナーシップによる効果を紹介しました。
提携による相乗効果
この連携により、ロイヤリティの高い顧客に対して、行動情報をBrazeに集約しながら、パーソナライズされたマーケティング施策を実現できます。
Yappliの強み
- デザイン性とUI/UX
- ノーコード開発プラットフォーム
- 利便性の高い管理画面
Brazeの強み
- データを活用したハイパーパーソナライゼーション
- クロスチャネルマーケティング
- 行動データの集約と分析

パネルディスカッション ハイライト
Q1: アプリに求められるものの変化
パネルディスカッションの冒頭で市川氏は、この5年間でアプリを取り巻く環境が大きく変化したと指摘しました。
かつてはアプリを「リリースすること」自体が目的でしたが、現在は「リリースして活用する」時代へと移行しています。顧客が求める機能も高度化し、単なるクーポン配信やプッシュ通知だけでなく、以下のような要素が重視されるようになっています。
- 顧客ニーズに合致した情報提供(ハイパーパーソナライゼーション)
- 行動ベースでのロイヤリティプログラム
- ブランド体験を深める場としてのアプリ
まさに「使われ続けるアプリ」を模索する時代になっていると、語りました。
Q2: カスタマージャーニーにおける具体的な課題
市川氏は、アプリは顧客にとって数あるチャネルの一つに過ぎないという前提に立ち、ブランドを体感する顧客が集まる場所としての役割を強調しました。
顧客が直面する課題は大きく3つのカテゴリーに分類されます。
アクティブ化の課題
- 離脱ユーザーへの再来訪促進
- 顧客に合わせた最適な配信時間の設定
購買促進の課題
- カート放棄への対応
- クーポンやキャンペーンのリマインド
- 興味や属性に基づいた情報提供
エンゲージメントの課題
- 顧客が希望するチャネルでのメッセージ提供
- 予約などのリマインド機能
- 来店後の店舗・商品評価の収集
特に顧客エンゲージメント領域では、顧客の行動に合わせた「おもてなし」が重要であり、顧客目線でのアプローチが求められていると述べました。

Q3: 今後の展望
市川氏は今回の協業により、ヤプリのユーザー企業に対して一段階レベルの高い顧客体験設計の手段を提供できるようになったと語りました。両社の強みを活かした連携を強化することで、高次元の顧客体験の提供を目指します。
Brazeのデータ活用とパーソナライゼーション機能が、ヤプリの洗練されたアプリデザインと融合することで、Brazeのお客様は「使われ続けるアプリ」という理想的な顧客体験を実現できます。
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