人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.12 | 横手眞さん

公開 2026年4月20日/更新 2026年4月20日/11 分で確認

人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち Vol.12 | 横手眞さん
作成者
Team Braze

人とブランドの“つながり”をつくる、挑戦者たちの物語

Brazeでは、顧客とのエンゲージメントに革新をもたらす人々に独自でインタビューを行い、彼らの挑戦と成果を紹介する「人とブランドをつなげる 顧客体験の創り手たち」をお届けしています。現場での知見や工夫、Brazeの活用方法など、実践的でリアルなストーリーを通じて、マーケティングの未来を考えるヒントを共有していきます。今回は、フリー株式会社 個人事業本部 個人マーケティング部 部長の横手眞さんにお話を伺いました。

——PRから通販、そしてSaaSへ

現在の職責をお聞かせください。

横手 フリーの個人事業本部で、個人マーケティング部の部長を務めています。フリーには個人事業主向けのチームと、法人向けのチームがあり、私は個人側のマーケティング全体を見ています。入社は2019年の11月なので、ちょうど6年目に入ったところです。

黒く縮れた髪をした男性が、「free」のロゴが入った黒いTシャツを着て、話しながら身振りを交えている。

-マーケターとしてのキャリアのスタートはPR会社だったと伺っています。

横手 青山学院大学の経営学部マーケティング学科を卒業後、最初はPR代理店に入りました。プレスリリースを書くだけでなく、時事や歳時記に合わせてメディアにとって価値のある切り口を設計し、報道に乗せていく「情報開発」という仕事に携わっていました。

ただ、PR代理店という立場だと、どうしても「認知や気づき」の領域の施策が中心になりがちです。実際の購買につながっているのかや事業インパクトが見えにくく、数字を直接追えない環境にもどかしさを覚えていました。「もっと購買に直結するマーケティングをやりたい」という気持ちが強くなっていったんです。

-その後、通販事業に移られましたね。

横手 ダイレクトコマースに関わる会社に転職しました。化粧品のオールインワンジェルで、プロモーションが売上に直結する世界です。PRのときには感じられなかった「施策の結果がすぐ数字に出る」という手応えはありました。ただ、時間が経つにつれて「自分が届けているものは、自分にとって本当に届けたいものなのか、貢献したいテーマなのか」という問いがくすぶるようになりました。

そのタイミングでフリーからスカウトのメッセージが届きました。当初は「会計ソフトの会社」という認識しかありませんでしたが、改めてよく読んでみると、個人事業主や中小企業の「働き方・生き方を変えていく」という強い意志が伝わってきて、これはおもしろそうだと感じました。

「人軸」と「テーマ」への共鳴——freeeを選んだ理由

-転職を決めた具体的なきっかけは何だったのでしょうか。

横手 自分自身、「社会に馴染みにくい部分がある」と思っていて(笑)。やりたいことで生きていく選択肢がもっと広がれば、人生はずっと豊かになるという感覚が昔からあったんです。だからこそ、キャリアの選択肢を増やすサービスや、個人が主役になれる仕組みづくりに関わりたいという気持ちが、転職活動の根底にありました。

フリーのカジュアル面談に行ってみると、会う人会う人が自分の言葉でミッションを語っていました。「スモールビジネスを通じて社会を変える」という熱量を、社員一人ひとりが体現していて、それがとても印象的でした。商材への関心よりも、人とテーマへの共鳴の方が強かったですね。

-実際に入社してみて、当初の印象と違った部分はありましたか?

横手 正直、会計というドメインはそれほど意識していませんでした。でも、入社してから気づいたのは、フリーの仕事は単に「確定申告を楽にする」だけではないということです。事業をスタートした人が、ちゃんとビジネスを継続して成長させていけるように伴走していく。そこにこそ本当の価値があると感じるようになりました。

入社以来、ずっと個人事業主領域を担当しています。社内でもかなり珍しいケースらしいのですが、「この領域がおもしろい」という気持ちを出し続けていたら、自然とそうなっていました。

「ムーブメントをつくる」——マーケティングへの哲学

-横手さんにとって、マーケティングとはどういうものでしょうか。

横手 「新たな常識をつくること」だと思っています。スモールビジネスをして生きるという選択が、もっと当たり前になる社会をつくりたい。そのためには実態として事業が育ち、その現象が広がっていくことで、空気として社会に染み渡っていく。そういうムーブメントを起こすことが、自分の中でのマーケティングの定義に近いかもしれません。

もともと家族が教育者の家庭で育ちました。「社会に出て価値を出すことは、誰かのためになること」という感覚が無意識にも染みついていたんだと思います。PRも通販も、今のSaaSも、すべて「誰かの生き方に良い変化を生むための手段」として捉えています。

-「新たな常識をつくる」という発想は、どんな現場経験から生まれたのでしょうか。

横手 PR代理店にいた時代に強く感じたことがあります。メディアに情報を届けるとき、ただプレスリリースを書くだけでは何も変わらない。世の中の文脈と商品の価値をちゃんと結びつけることで、初めて人の認知に入っていける。その感覚は今でも変わっていません。

デジタルマーケティングでも同じで、施策を「配信する」と考えるのではなく、「この人に今、何を届ければ意味があるか」を問い続けることが大事だと思っています。チャネルはあくまで手段であって、本質は相手の状況をきちんと理解し適切なタイミングで新たな価値に出会えるようにすることです。

-マーケティング環境そのものも、ここ10年でずいぶん変わりましたね。

横手 PR会社にいた2016年頃は、まだテレビが最も力を持っていました。SNSのインフルエンサーという概念もありましたが「テレビで見るタレントじゃないんですか?」という反応が普通でしたね。

今では、YouTubeなど個人のコンテンツも当たり前になり、ショート動画など無意識で見てしまう新たなフォーマットがあったり、ユーザーの情報接触の場所が細分化しています。だからこそ、「どのチャネルで広める」かよりも、「誰に、何を、どう届けるか」を顧客目線で描ける事がマーケターの本質的な差別化につながる時代になってきていると感じます。

黒く縮れた髪をした男性が、「free」のロゴが入った黒いTシャツを着て、話しながら身振りを交えている。

「ペインを取り除く」先にある体験を設計する

-横手さんが考える「良い顧客体験」とはどのようなものでしょうか。

横手 短期的なペインを取り除くことと、中長期的に顧客の成長を導くことを、両立させることだと思っています。会計ソフトであれば「確定申告を簡単に終わらせる」という体験はもちろん大切です。でもそこで止まってしまうと、ミッションとして少し物足りない。

本当に届けたいのは、「事業をちゃんと経営できている」「やりたいことができるようになった」という状態まで、一緒に歩んでいく体験です。たとえば、経営レポートを見てコスト管理をして、次のやりたい事に十分投資ができるようになる。そういう「未来へ導く体験」の設計こそが、フリーが目指しているところだと思っています。

-それはコミュニケーション設計にも影響しますね。

横手 そうですね。顧客の状態によって、今必要なメッセージはまったく違います。開業直後の方に「経営管理を最適化しましょう」と言ってもまだ始め立てですし、少し実感が湧かないと思います。一方で事業が軌道に乗ってきた方に基本的なプロダクトの使い方だけを伝え続けるのももったいない。「今この人はどんな状態にあって、次に何が必要か」を考えながら、おせっかいをするような感覚で体験設計をしています。

短期の施策と中長期の顧客育成は、時に矛盾するように見えることもあります。チームメンバーと話しているとき、「今どちらの話をしているか」が混在することもあるくらいです(笑)。でも、その両方をちゃんと行ったり来たりしながら、顧客への寄り添いを設計できるマーケターが、これからは求められていくんじゃないかと思います。

-そうした体験設計を実現するうえで、Brazeはどんな役割を果たしているのでしょうか。

横手 一言で言えば、「やりたいことをすぐ試せる環境」を与えてくれるツールです。顧客状態に合わせたコミュニケーションを設計しようとすると、プロダクト上の行動データとマーケティング施策をいかに分断なくつなぐかが鍵になります。以前は、施策を実行するためにデータベースを参照してリストを作り、別のシステムに流し込んで配信する、という工程が必要でした。それだと仮説を立てても検証までのリードタイムが長くなる。

Brazeを使うと、たとえばアプリ内で取得したアンケートの回答データを起点に、メールやプッシュ通知の出し分けができます。プロダクトのデータとコミュニケーションチャネルが一つのプラットフォームの中でつながっているので、「この人は今こういう状態だから、このメッセージを届けよう」という判断と実行が素早くできる。顧客の解像度を高めながら、それをすぐ施策に反映できる環境は、体験設計を考えるうえで本当に助かっています。正直、これはBrazeじゃなきゃできなかったと思っています。

-AIの進化がめざましい今、コミュニケーションにおいて変わらないものはあると感じますか?

横手 AIはどんどん使っていくべきだと思っています。届けるべき人に届けやすくする、伝わりやすくするための最適化という意味では、非常に有効です。ただ、最後に残るのは「人と人のつながりや人だからこそのあんしん感」だという感覚は、まだ自分の中にあります。

例えば、フリーには「コーディネーター」と呼ばれる、事業に伴走するスタッフがいます。

法人の登記や口座開設などの手続きから、事業計画や創業期の融資、会計の使い方といったバックオフィスの運営に至るまで、様々な事業の不安を人が直接フォローしています。AIが多くを自動化できる時代だからこそ、「人が関わる体験」の価値はむしろ高まっていくと思っています。逆説的に聞こえるかもしれませんが、人とテクノロジーのバランスを大切にしているフリーは、AIの時代において強みを発揮できる会社になれると信じています。

黒い「freee」のTシャツを着た男性が、大きな青い「freee」のロゴが入ったガラス壁の前で微笑み、その向こうにはオフィスの内部が見えている。

-最後に、マーケターとしてのキャリアを考えている方へメッセージをお願いします。

横手 「何を売るか」より「誰の何を変えたいか」という問いを持ち続けることが大事だと思います。自分自身、PRも通販も会計も、扱う商材はバラバラでしたが、軸にあったのは「人の選択肢を広げたい」というテーマでした。その軸がある人は、どんな業界に行っても本質的な仕事ができると感じています。マーケティングは施策ではなく、社会に対してムーブメントを起こす仕事です。ぜひそういう視点でキャリアを描いてみてほしいですね。

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